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hinata

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脱毛記【10】渦中

ウイッグをカットしてもらって
ルンルンでそのまま久しぶりに都内に出る。

世の中、緊急事態宣言の真っ只中の祝日…ではあったのだけど
数日前、たまたまこの祝日空いてる?と声をかけてくれた友人と
ほんのちょっとだけ会って話したかった。

脱毛症のことは、ごく初期に言ってあった。
時々、その後どう?と様子伺いの連絡をくれる。

髪はね、抜け続けてるよ。
皮膚科の通院、始めた。
沈んだり、アッケラカンとしてみたり、
感情の波荒め(苦笑)

そんな返信をすると、
感情が昂ぶってなければ、遅めのランチでもいかが?と(笑)


友人は男性。

髪が抜けていることは
普段接する周囲の人には積極的に触れ回っているけれど
同世代の男性には、ちょっと言いにくい感覚があった。
なんとなく、女性以上に気を遣わせてしまうような気がするし
気を遣われることで、自分が傷つくような気もしていたから。

でも、その日ウイッグをカスタムしてもらって
ちょっと上機嫌だった私は
これがウイッグだと気づくかな!?と
そんないたずら心の方が勝っていた。足取り軽く一路南へ。



夕方の東京。

直接会うのは久しぶりだったし
彼は、やはりこのワタシ的大きな変化に気づいていない。
外見の変化には比較的よく気づいて口に出すタイプの人だけど
髪、わかる?とこちらから振って初めて
…ん?色?変えた?と、そんな程度の反応。

ウイッグなんだよこれ!すごくない!?と鼻息荒くアピールするも
…あ?へ〜、そうなんだ って…おいおいおい!
もうちょっと驚けよ!と内心勝手に憤慨(めんどくさい女)。

もうお互い妙齢の男女であるから
カツラのひとつやふたつ驚くことでもないか…
よく知ってるのかな、昨今のウイッグ事情やクオリティの高さを。
ウイッグだよアピールをされたところで
コイツは何をすごいと言わせたいのか、
リアクションのポイントがわからなかったのかも。


ああ、でも。もしかしたら。


困らせてしまったのかもしれない、と一瞬思った途端、
急に私の心が曇りだした。




お互いの近況、主に彼は仕事の話を淡々と。
緊急事態宣言下、食事処は長居はできない空気で
カフェに場所を移すけど、同じようにひそひそと小声の会話。
結局コーヒー1杯分で、そこも後にする。

当たり障りないことを話しながら、
私はどうしていいのかわからなくなってしまった。
彼の態度が、急によそよそしく感じられてきてしまった。

彼は私の今の頭を見たらどう思うのかな。
未婚の女友達が、こんなことになってかわいそうにって思うのかな。
感情の振り幅が大きい、と先に私が言っていたから
どう接するか計り兼ねているのかな。
もし彼の奥さんが同じようになったら、彼はどう接するのかな。
これからウイッグを被った私が新たに男性と出逢って
実は髪がないんですよって言ったら一体どんな反応をされるのかな。

ぐるぐると被害妄想の渦。

落ち着いて語り合うこともできず、
バッティングセンターで憂さ晴らしもできず、
緊急事態宣言下の街を、最も恨んだ日だった。
それだってきっと笑い合うことはできたはずなのに
なんだかもう、自分で吐きそうなくらいつまらない話題しか出てこない。
あの時私がこんなことを考えていたと知ったら
むしろ彼は悲しむだろう。
口にすることもできず、かといってすぐに帰ることもできず
ただただ歩くことに彼を付き合わせた。


正直、ウイッグが必要だ、と自覚してからの数日間は
まともに眠れなかった。
抜け落ちて家中に散らばった抜け毛を
日に何度も集めて捨てる、というのを繰り返していると
ああ、こういうの虚しいっていうんだなって、そんな感じだった。


帰って歩数計を見ると、10kmくらい歩いてた。


地元の駅に着く頃に届いた彼からのLINE。


次はカレー食べよう。
あまり気にせず!



いっぱい歩いたから、久しぶりにぐっすり眠れたよ。
ありがとう。





そんな今日の1曲。
♪「茜さす帰路照らされど」椎名林檎












by nyatsuko725 | 2021-03-28 20:09 | 円形脱毛記 | Comments(0)
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